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【トップに聞く 2022】TOKYO BASE 谷正人代表 「ヨウジの売れ行きは圧倒的」 中国市場戦略を聞く

ステュディオス名義のオリジナル廃止は間違っていなかった

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―上期は赤字から脱却しました。プロパーの消化率も順調に進捗しているのでしょうか?

 具体的な数字の開示は控えますが、昨年末に大きなセールをやったので在庫がだいぶ健全化しました。ただ、在庫は気を抜くとすぐに積み上がってしまうので永遠の課題ですね。中国の店舗はある程度アクセルを踏んで在庫を積んでいる状況ですが、営業の評価基準を含めた見直しは予防として取り組んでいきたいです。

■TOKYO BASE 2022年1月期第3四半期 連結業績
売上高:133億2600万円(前年同期比26.3%増)
営業利益:7億2900万円(前年同期比450.3%増)
純利益:6億2000万円(前年同期は純損失1億1200万円)

ステュディオスのオリジナルを廃止してから1年。業績へのインパクトはどの程度あったのでしょうか?

 オリジナル商品はエントリー層にアプローチするために作っていたので、ゾゾタウンでの売上にはやはり大きな影響がありました。実店舗においても、冬の新作が立ち上がる時期にレディースで対応しきれなかった店舗が一部ありましたが、別注アイテムをうまく駆使して対応できたお店は全く問題がありませんでしたね。メンズに関してはむしろ売り上げが上がり、高額なものも売れるようになりました。こういう言い方をするのは語弊があるかもしれませんが、オリジナルがなくなった分、ステュディオスはより洋服好きが集まるようになったような実感があります。

―EC売上は大きく落ち込みました。

 売り上げとしては落ちていますが、在庫消化に伴うクーポンがあったので、粗利益ベースでは前年を上回っています。

■ステュディオスの売上構成比(2022年1月期第3四半期)
国内実店舗:36億8300万円(前年同期比33.7%増/構成比 55.1%)
海外実店舗:12億7700万円(前年同期比268.9%増/構成比 6.9%)
EC:14億4200万円(前年同期比19.0%減/構成比35.6%)

―ではオリジナル廃止という判断は間違っていなかった?

 ステュディオス事業においてはそう断言できますね。オリジナルのものづくりはユナイテッドとパブリックでしっかり取り組んでいるので、ステュディオスでは存在意義であるデザイナーズブランドのセレクトに注力していこうと思います。

―ステュディオスのオリジナルに加えて、D2C業態とゾゾタウン向け業態からも撤退します。

 D2C業態「NEW MARKET TOKYO」と、ゾゾタウン(ZOZOTOWN)で展開する業態「トウキョウ デパートメント ストア(TOKYO DEPARTMENT STORE)」の終了を決めました。「時流にのったビジネスモデル」という点でやっていたところがありましたが、そういうのは存在意義がないので。これらの事業を精算して綺麗にすることで「本質的なビジネスモデル」を推進できたと思っています。

谷正人

Imaged by FASHIONSNAP

―サプライチェーン全体にかかる流通コストの上昇が業界に大きな打撃を与えていますが、TOKYO BASEへの影響は?

 中国に対する輸出がありますので然るべきコストはかかってきていますが、価格帯が安くはない業態なので大きな問題にはなっていないですね。売り上げに対する物流比率を下げる努力も都度しています。

―秋冬商戦の進捗はいかがですか?

 11月は去年がすごく売上が良かったこともあってギリギリの戦いでしたけど、12月は月販で過去最高の売上20億円超えを達成しました。

―秋冬に立ち上げた「ザ トウキョウ」の手応えは?

 ステュディオスよりも年齢層が高い40〜50代の富裕層をターゲットに、これまで未開拓だった丸の内と六本木に出店しました。結論としては手応えを掴んでいます。ただ、良くも悪くもまだステュディオスの延長線上にあるので、少しずつお客さまのニーズに合わせながらステュディオスから離していくことが課題です。ザ トウキョウにはステュディオスで長く販売を経験してきたスタッフもいて丁寧な接客ができているので、このサービス力をしっかり継続でいれば顧客はしっかりついてきてくれると思っています。

「ザ トウキョウ」の店内をナビゲート

―客単価が10万円と高価格帯の業態ですが、日本からはラグジュアリーブランドが育っていないように感じます。ブランドを取り扱う上で「日本のラグジュアリー」をどのように定義していますか?

 年代や文化、テイストに囚われない柔軟なクリエーションの発想と、質実剛健かつ伝統的なメイドインジャパンの仕立ての良さが合わさった「日本人デザイナーズブランド」ですね。デザイナーが日本人であれば、拠点はニューヨークやパリでも構わないと思っています。

―「ケンゾー(KENZO)」のアーティスティックディレクターにNIGO®が就任したことが話題を集めましたが、ケンゾーも対象になりえる?

 ケンゾーについてはNIGO®さんが加入すると発表された直後にアプローチしました。基本的には「東京のクリエーションを世界へ」という考え方なので、東京のクリエーションが絡んでいるブランドであれば取り扱っていきたいとは思っています。

―アスレジャー業態の「エープラス トウキョウ」も新たに立ち上げました。

 スポーツ素材のウェアをいかにファッション的に見せられるかが鍵だったのですが、アスレジャーやスポーツという言葉に翻弄されてしまった部分が正直あります。例えば筋肉ムキムキのモデルを使ってしまったり、内装なんかも割とスポーツに寄せ過ぎてしまったり。

 ただ、ファンは着実に少しずつ増えています。海外と日本では「アスレジャー」の考え方が異なるので、日本に関して言えば、友達と皇居ランをしてインスタグラムに写真を投稿するような、スポーツをライトに楽しむ層や、スポーツはしないけど機能的な素材が好きな層を取り込んでいかないと入れていかないと大きなマーケットにならないというのは感じましたね。ファッションとして着たいと思えるシンプルなデザインを追求しながら、日本人に合うアスレジャーをしっかり提案していきたいです。

「エープラス トウキョウ」のロゴ

「エープラス トウキョウ」のロゴ

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「アフターコロナ」はすでに来ている

―2022年のアパレル業界についてはどのように展望していますか?

 間違いなくシュリンクしていくんじゃないですかね。ショップの淘汰も進んでいくと思います。ゾゾタウンやルミネなどのトラフィックの強いプラットフォームや商業施設の流動客に営業を任せていたところは、特に厳しい状況に置かれているのではないでしょうか。

―集客で重要なことは?

 商品力と営業力。この2つですね。地味な回答かもしれませんが、営業力を伸ばすためにはやっぱり企業文化として根付いているかだと思っています。LINEを活用していかにお客さまに商品の魅力を伝えられるか。また、コレクションを研究するなど「売るための努力」が文化として浸透していれば必然的に伸びていくと思います。ファッション業界のプロとして販売員がイケてない服を着ていたら「ダサいからやめた方がいいよ」ということも正直に言い合える。会社としてはそういった環境づくりも必要になってきますね。

TOKYO BASE ショールーム

取材は新オフィスのショールームで行った

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―2022年は「ウィズコロナ」「アフターコロナ」どちらを想定して経営していきますか?

 2020年の夏ごろから僕たちは「アフターコロナ」としてやっています。

―「ウィズコロナ」と答える企業が多い中、意外な回答です。

 リモートワークも特別な事情がある方がいれば対応しますけど、うちの会社では2020年の1回目の緊急事態宣言が終わってからは基本的には全員出社の方針で進めてます。もちろんそれが嫌で辞めていった人も多少いたかもしれないですけど。コロナを経て、対面がいかに重要であるかはみんなわかっているはずなんですよ。うちは「小売業」ですから、現場スタッフが最前線で頑張っているのに、本社スタッフが家から指示しても誰も聞いてくれないと思いますし。

―コロナ禍が続きますが、引き続き積極出店の方針ですか?

 そのつもりです。出店や事業においても「コロナだから」というのはあまり意識していません。

―他社ではコロナ禍のライフスタイルに合わせてゴルフやアウトドアの展開が加速しました。

 気持ちはわかりますけどね。でもファッションビジネスについてここまで深くやっていると安易に手を出せないなと。仮にゴルフウェア市場に参入したところで、昔からゴルフウェア事業をやっている方々に比べたら文化も歴史も敵わないですし。まぐれで瞬間的に売れるかもしれませんけど、そんなに甘いもんじゃないと思っちゃいますね。ゴルフビジネスと心中するならばありかもしれませんが。

―M&Aについては進捗はありますか?

 長期的に見て一緒に事業を伸ばせる企業とご縁があれば、前向きに検討したいという段階です。ただ、M&Aすることが目的ではないですね。

―もしM&Aするとしたらどんな企業がいいですか?

 世界と戦えるファッション企業で、ある程度大きな規模感が見込めることも重要です。

谷正人

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受注販売は感動を生まない

―経営とサステナビリティの両立は今後より求められると思います。

 まずは余計なことをしない。作りすぎない。これが大事ですよね。再生素材を使った新しいブランドをやるというのは全くサステナブルではないですし。余計な事業から撤退することも一つのサステナビリティだと思っています。

TOKYO BASE ショールーム

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―過剰生産しないために完全受注生産に取り組む企業が増えています。

 逆に僕たちは受注販売を止めました。「いま欲しい」というお客さまの方が圧倒的に多いですし、受注生産商品と在庫がある商品では、売れ方が3、4倍ほど変わります。あるショールームストアでは「商品をその場で持って帰りたい」という来店客が8割いたというデータが出たそうですよ。それはそうですよね。わざわざお店に行っているのだから。

―受注生産はサステナブルだという見方が強いですが。

 サステナビリティの観点で言うと受注販売の方がもちろん良いですが、受注商売ってある意味“こちら側の都合”でもあるじゃないですか。ステュディオスでも5、6年前に顧客向けに受注会を開いたことがありますが、シーズンアイテムを先見せすることで逆にその後お店に来てくれなくなってしまうんですよね。要するに「お店に行く感動」がなくなってしまうんですよ。受注販売することによって逆に売上が半分になってしまったら、何のために受注販売をやっているのかという状況になってしまう。我々としては1人でも多くのお客さまに感動を届けることを優先し、在庫を残さず売り切ることを目指していきます。

谷正人

Imaged by FASHIONSNAP

―最後に、谷代表にとって必要な人材とは?

 新卒と中途によって回答が異なりますが、企業理念に共感していることは大前提で、会社のためにというよりは自分のために実現したいことがある人に来てもらいたいですね。それが結果的に会社のためになっていればどんなことでもいいです。

 新卒に関しては能力値よりもベクトルの角度が高い人。中途半端に知識があってああだこうだ唱えて動かない人よりは、知識がない状態でも目標実現のためにアクションを起こせる人。口は生意気でも行動が素直な人がいいですね。

 中途に関しては、実はこの数年で考え方が変わりました。もともとは、他社で役職を持っているようないわゆる一般的能力が高い人がいいと思っていたんですけど、何でも無難にこなせる人って残念ながら“何もできない”人だなと気付いてしまって。中途においては一点突破な武器がある人がいいと思います。武器はなんでもいいんですよ。トレンドを誰よりもキャッチアップできるとか、パリピでも人脈づくりに強いとか、愚直に働き続けられる粘り強さがあるとか。そういった人は言語の壁さえ超えれば国内だけではなく海外でもその力で発揮できますし、社内からもリスペクトされるので逆に馴染みやすかったりするんですよね。

―新卒採用にも力を入れていると聞きました。

 今年度は70人程度を採用する予定です。例年は50〜60人ほどなので、少し増える見込みですね。人材は増やしていきますが、従来の年功序列型企業のように能力がなくてステップアップできない人が長く働きやすい企業になってはいけないなと思っています。

(聞き手:伊藤真帆)

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