第97回 ピッティ・イマージネ・ウオモの会場
第97回 ピッティ・イマージネ・ウオモの会場
Image by: 増田海治郎

Fashion 注目コレクション

スーツ需要が減る中、メンズファッションの祭典ピッティで注目のスタイルは?

第97回 ピッティ・イマージネ・ウオモの会場
第97回 ピッティ・イマージネ・ウオモの会場
Image by: 増田海治郎

 2020年1月7日から10日までの4日間、世界最大級の紳士服見本市「第97回 ピッティ・イマージネ・ウオモ(Pitti Immagine Uomo 97)」がイタリア・フィレンツェで開催された。8年にわたり毎シーズン取材しているファッションジャーナリストの増田海治郎がリポートする。

(文:ファッションジャーナリスト 増田海治郎

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 世界的にスーツの需要が減る中で、メンズのクラシック系ファッションのトレンドを提示する場だったピッティが岐路に立たされている。来場者も出展ブランドも減少傾向にあり、以前はピッティの風物詩だったスナップフォトグラファーと孔雀(=写真を撮られるために派手な服装をしている人たちのこと)も少なくなった。7〜8年前のブームとも呼べるような状況と比較すると、やや寂しい状況なのは否めないが、それでも1,000ブランド以上が出展し3万人を超える来場があるわけだから、メンズファッションにとって重要な場であることは変わりがない。

 ドレス系の最注目ブランド「ラルディーニ(LARDINI)」は、シベリア鉄道にインスパイアされた旅を連想させるコレクション。ブラウン〜ワインレッドの落ち着いたカラーリングで、近年では珍しいムートンコートもある。今シーズンからスタートする「ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)」の相澤陽介とのコラボレーションライン「LARDINI BY YOSUKE AIZAWA」は、いかにも相澤らしい都会的かつ機能的なパーカやスニーカーを揃えた。

 パドヴァを拠点とする「ベルヴェスト(Belvest)」は、ヴェネト州を代表するファクトリーという原点に立ち戻りつつ、軽くて着心地の良い現代的なテーラードを同時に提案した。今シーズンからジャケットに付属するブートニエールは、ヴェネツィア沖に浮かぶムラーノ島のガラス「ムリーノ」。洗えるウール「レダ・アクティブ」を採用した接着芯のジャケットや、海を連想させるパイル素材のストライプジャケットも必見!

べルヴェストのストライプジャケット

 「ブルネロ クチネリ(Brunello Cucinelli)」は、新しい都会の紳士像を定義。フェアアイルなどの暖かみのあるローゲージのニット、裏側にナイロンを配したニットアウター、極限まで薄くなめしたムートンジャケットなどを提案した。足元はクラシックなマウンテンブーツやチロリアンシューズがイチ押し。ネイビーとブラウンを組み合わせた"アズーロ・エ・マローネ"の提案も一周まわって新鮮だ。

 イギリスの「ドレイクス(Drake's)」は、タイブランドからトータルブランドに発展し、近年注目を集めてるブランド。コーデュロイのジャケットの下にラガーシャツを着たり、クラシックなバルカーマンコートにマルチカラーのシェットランドセーターを合わせたり、どこかスタイリングのこなしが日本のセレクトショップっぽい雰囲気がある。今秋冬で人気だったマルチカラーのスエードコートは、様々なカラーバリエーションで提案されていた。

ドレイクスはスタイリングに注目

 コート系では、やはり「ヘルノ(HERNO)」の提案が抜きん出ている。今シーズンはサステナブルの提案を「ヘルノ グローブ」としてカテゴライズ。小松マテーレの「オニベジ」、リサイクルウール、再生ナイロンの「エコニル」、5年で生分解される「バイオディグレーションナイロン」などを使用したコレクションを打ち出した。同じイタリア北部を拠点とする「スカルパ(SCARPA)」と協業し、ブランド初となるスニーカーも発表した。

ヘルノとスカルパのスニーカー

 動物性の素材を一切採用しないアウターブランド「セイブザダック(SAVE THE DUCK)」は、今シーズンから帝人が日本での展開を手がけるサステナブルな注目株。「エフシーイー(F/CE.)」の山根敏史が手がけたカプセルコレクションは、完成度が高く価格もリーズナブルで、日本でも人気を集めそうだ。

"アニマルフリー"で知られるセイブザダックのブース

 ニット系では、シェットランドセーターに代表されるミドルゲージと、カウチンセーターや90'sのラルフローレンを連想させるローゲージのカーディガンが目立った。フィレンツェのニットブランド「ウール&コー(WOOL&CO.)」は、タイダイ染めのケーブルニットや、部分染めのモダンなデザインのミドルゲージのニットが充実。カシミヤといえばの「ジョンストンズ(Johnstons)」は、贅沢なカシミヤのローゲージカーディガンを提案。ニットが人気の「アルテア(Altea)」も、民族調の色柄のローゲージのニットを強化している。

ジョンストンズのローゲージカーディガン

 ニットで話題を集めたのが、「アンリアレイジ(ANREALAGE)」と「トウキョウ ニット(TOKYO KNIT)」のコラボレーション「TOKYO KNIT × ANREALAGE」。東京ニットファッション工業組合に所属するニッターと、9ルックのカプセルコレクションを発表した。2日目に行われたレセプションには、スージー・メンケスら著名なジャーナリストも来場し、ブランドの注目度の高さを伺わせた。アンリアレイジの森永邦彦は「自分たちでずっと作ってきたシグネーチャーのパッチワークを、初めて外部で作ることに挑戦した。出来栄えは素晴らしく、今後も中長期的に取り組んでいきたい」とコメントしている。

 日本のブランドの出展も減ってきているものの、いくつかのブランドは主役級に注目を集めていた。中込憲太郎がディレクションするコートブランド「コヒーレンス(COHERENCE)」とジャケットブランド「オルビウム(ORBIUM)」は、その凝りに凝った作りで高い評価を受けている注目株。昨年の世界的なバンダナブームを牽引してきた「チルドレン・オブ・ザ・ディスコーダンス(Children of the discordance)」や、アウトドアブランドとは機能服のあり方を提案している「F/CE.」のブースも多くの人を集めていた。

オルビウムのジャケット
エフシーイーの新作

増田海治郎
雑誌編集者、繊維業界紙の記者を経て、フリーランスのファッションジャーナリスト/クリエイティブディレクターとして独立。自他ともに認める"デフィレ中毒"で、年間のファッションショーの取材本数は約250本。初の書籍「渋カジが、わたしを作った。」(講談社)が好評発売中。

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