パリのトレードショーに出展するなら知っておきたい10のこと

 パリのトレードショーには、ファーストセッション(1月と9月)とセカンドセッション(3月と10月)が存在する。ファースト時は大型「プルミエールクラス(WHO'S NEXT/PREMIERE CLASSE)」と「トラノイプレビュー(TRANOI Preview)」(※1月は同時期だが、7月は別日程)、パリコレ開催時のセカンド時にはモード色の強い「トラノイ(TRANOI)」をはじめ「パリ・シュールモード(Paris sur Mode)」「プルミエールクラス(Premiere Classe)」「ウーマン(WOMAN)」など市内で多くのトレードショーが開かれる。今回、2017-18年秋冬パリファッションウイーク中に開かれたセカンドセッションを取材して、各出展者から「パリに出展するなら、知っておくべき事」を聞き出し、10のテーマにまとめてみた。(写真と文・アナログフィルター『Journal Cubocci』編集長・久保雅裕)

① 3回は同じ場所にでるべし

 18年前から海外市場に挑戦し続けているあるニットメーカーは「3回目まで結果は分からない。最初は2着くらいのオーダーから始めて、良かったねと増やしてくれるのは1年後」と話す。また27年前からパリに出展経験のあるデザイナーは「バイヤーにとっても新しいものを入れるのはリスク。3シーズンはラインやテーストを変えず我慢して、同じ場所に出る事。そうすれば、覚えてくれていて声が掛かるようになる」という。つまり3回という数字は、店頭で販売された結果が投影されるシーズンが3回目という事と毎回出展してきて安定したブランドと認知される周回ラインが3度目という2つの意味から言われていると推察できた。

② 狭く深く濃く、世界観をはっきりと

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 「ニットの工場なので編地の魅力で見せるから、形はベーシックでも世界観ははっきりしている」(前出のニットメーカー)。上質なセーターをネパールで生産するデザイナーも「欧米バイヤーは物本位。自分の売りがはっきりあれば押せる」という。また前出の27年前から出展するデザイナーは「日本のマーケットは流行が短サイクルで、常に表情を変えていかないとならないから広く浅くといえる。一方世界は、それほど短サイクルでもなく、流行にすべてが流されることも無いので、同じものをやっていても濃い方がより印象に残るから、狭く深くと言える」など世界観を分かり易く伝えていく事が覚えてもらえる近道のようだ。

③ サイズやスケジュールは日本とは全く違う

 「36~42の4サイズを準備した」など日本と決定的に違うのが洋服のサイズ。日本では、1サイズか、多くても2サイズのところがほとんど。しかし、ヨーロッパには様々な人種が居り、体型も様々。日本より大きいサイズが必要なため、パターンを含め対応しなければ受注を取れない。また「やっとのことでサンプルアップを前倒ししてきた」という声も聞かれた。3月中旬以降の国内展を目指してサンプルアップを進めていては、間に合わないのだ。2月末までにはサンプルを揃えなければならない。この辺りは生産上の大きな課題となる。

④ 損益分岐点は、経費の3倍

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 損益分岐点は「出展料、渡航費、滞在費などを含めた諸経費の3倍位の売上げ」を目安にするというのが多くの出展者の声だった。原価の2倍を卸価格として考えると、仮に出展経費を100万円(うち出展料70万円、渡航費15万円、滞在費15万円)とすると300万円の売上げで粗利が150万円となる。これなら200万円の売上げでも十分ペイできるように思えるが、実際には只でさえ高いと言われる日本製であることを意識して、卸価格を抑えているのが実態だからだ。つまり原価の1.5倍を卸価格にして「まずは買ってもらう事」を優先しているのが現状のようだ。

⑤ 石の上にも「5」年

では、何年辛抱すれば報われるのか。シビアな数字だが3~5年は赤字を覚悟する構えが必要なようだ。もちろん例外的に1回目から大成功などというブランドも無い訳ではないが、それは稀な事だと20年を超えるパリ取材から断言できる。
「3年目に黒字転換した」「5年は赤字」「1回目は個人オーダー含め5件で8000ユーロだった。5年でやっと損益分岐点を超えた」「最初の数年は数も少なく、5年経って取引先が増えた」など今は黒字転換し、成功しているブランドに聞いても3~5年は辛抱の時代だったようだ。

⑥ 価格のハンデを覚悟せよ

 「靴はイタリア、スペイン、ポルトガルとたくさん産地がある。運賃と関税はハンデとなる」「もともと日本はコストが高く、さらにファーイーストのため、運賃もかさむ。EU外から買った事のないバイヤーは、その運賃や関税などのコストが想像できないなど、日本のバイヤーが海外から輸入するのと同様に高い運賃を払わねばならないというハンデがあり、更には昨今の韓国、中国、アジアのブランドの台頭による競争も激しくなってきている点も見逃せない。

⑦ DDPにしたら売れた?

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 価格設定については様々な意見に分かれた。「2年前にFOB(本船渡し価格)からDDP(仕向地持込渡し・関税込み価格)に変更したら売上げが良くなった。数字は一番高い欧米に輸出する値段で出している」という企業があった。運賃や関税の計算ができないバイヤーに向けた手立てという事になる。また「米国はDDP、他はFOBが多い」などのきめ細かな価格設定をするブランドもあったが、ほとんどはFOBかCIF(運賃・保険料込み価格)、いずれかによる取引だった。DDPにする事で「高い」と思われてしまう危険性と為替リスクもあり、そこまで踏み込むブランドは少ないようだ。また初出展ブランドに対して「まずは、キチンとしたプライスリストを作る事。それすらできていないで出てくる人も多い」と事前の準備が足りていないとの厳しい指摘も出された。

⑧ 前金30%でCOD

前金、所謂デポジットと称する生産前のオーダー時に支払ってもらう金額だが、これは圧倒的多くが30%と答えた。また出荷前に残金を全額支払ってもらうCOD(キャッシュ・オン・デリバリー)も一般的だ。国内流通では完全買取でも掛け売りが多いが、海外の場合は取り立てにも行けないという理由からCODが一般的と言われる。だが、大手の小売店や百貨店の場合、信用もあるという事で掛け売りにする場合も良くある事だ。但し、大手だからといって、倒産しないという保証はないし、また必ず払ってくれるという保証もない。中には大手から回収できなかった事例も多々見聞するからだ。ここは、自己責任で判断するしかない。今回の取材では、「前金100%にしました。だって、そうでないと作れないんだもの」という強者も居た。

⑨ ミニマムの金額設定をすべし

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 「2000ユーロにしました」「500ユーロから。ただ日本と違いチェーン店も少なく、個店が殆どだが、気に入るとリピートしてくれ、日本の3倍くらい付けていく」とこれも様々だった。特に決めていないというブランドも多く、まずは初めてのオーダーを取りたいとの強い思いが伝わってくる。しかし、アイテムによって運賃の基準が変わってはくるが、少ないオーダーであればあるほど、相対的に運賃、通関費用などのコストがかさみ、結果として高くなってしまって売りづらくなる。その辺りも勘案しつつ、ミニマムの設定を進めた方が良いだろう。

⑩ 最後に「やってみなきゃわからない」

 今回、「何故、パリ出展に挑戦したのか」の問い掛けに対する多くの回答がこれだった。

「自分でやってみないと何も分からない」「売れる、売れないは別にして、やってみたら良いと思う。いろんな人種の方に見てもらって、これからの事が具体的に見えてきた」「いろんな補助金をいただけたので、チャンスだと思い出展しました。サイズや価格、スケジュールなどもマーケティングが必要だと思っています」「周りの賑わっているブースを観察して、マーケティングもしつつ、出展している」「売上げよりもモチベーションアップの為に来ている。反応を見ながらクリエーションも考えていく機会にもなる」というように、出展動機には「世界で売れるか試したい」というマーケティング要素と「実体験に勝るものは無い」という覚悟が見て取れた。

いずれにしても、まずは勇気を出して第一歩を踏み出す事で、閉塞感のある日本市場(日本市場を捨てるという意味ではない)を飛び出し、新市場を開拓していこう。

【パリルームリスト(一部)】
トラノイ http://www.tranoi.com/
プルミエールクラス https://www.premiere-classe.com/en
パリ・シュールモード http://www.parissurmode.com/
カプセル http://www.capsuleshow.com/show/paris-womens-2017
ウーマン http://manwomanshows.com/shows/woman-paris
ジップゾーン http://www.zipzonefrance.com/
ヴァンドーム・ラグジュアリー http://www.vendomeluxury-paris.com/
フーズネクスト http://www.whosnext-tradeshow.com/