【対談】大切なのはブランディングかモノの価値か「ミキオサカベ」×「ベッドサイドドラマ」

左)坂部三樹郎 右)谷田浩 Photo by: FASHIONSNAP

 坂部三樹郎とシュエ ジェンファンの「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」と谷田浩と西本絵美が手がける「ベッドサイドドラマ(bedsidedrama)」が今年10周年を迎えた。クリエーションを追求してきた両ブランドは、10月17日に開幕する「アマゾン ファッション ウィーク東京(Amazon Fashion Week TOKYO)」でランウェイショーを実施。これまで話したことさえほとんどなかったという両ブランドのデザイナー坂部三樹郎と谷田浩の両氏は、10周年を記念するショーを前に何を思うのか?

意外にも接点がなかった、近くて遠い両者のこれまで

−お二人はほぼ初対面?

坂部:もちろん知ってはいましたが、ちゃんと話したことはなかったですね。

谷田:そうですね。

−「ミキオサカベ」「ベッドサイドドラマ」は今年10周年

谷田:10年は気がつけばという感じで、ブランドを立ち上げてから2週間くらいしか経っていない感覚ですね。もちろん10年の間にはたくさんのことがあったのですが、あまり紆余曲折を感じなくて、困ったり悩んだりがあまりなかったのでそう感じているのかもしれません。

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坂部:僕も2週間くらいしか経ってない感覚ですね。

谷田:色々あったけれど、あまり10年経ったという実感がないですよね。

坂部:苦労したことってすぐ忘れてしまいますからね。ただ僕の場合、ブランドを立ち上げる前は、10年やることに恐怖を感じていました。10年やると急にダサくなることって"ファッションの世界のあるある"で、それがいつ来るか分からない怖さみたいなものは漠然と持っていましたね。自分では分からないけど、「ミキオサカベ」はまだ大丈夫な気がしていますが。

谷田:うちもそうですが、「ミキオサカベ」も10周年という感じがあまりしないですね。

坂部:やりたいことが定まっていないからそう感じるのかもしれない。「ミキオサカベ」は良くも悪くも「これでいこう!」というものがないですから。

谷田:「ミキオサカベ」はそういう感じがしますね。"わがままブランド"というか、やりたいことをその都度やっているイメージがあります。

坂部:まあそれしかできないんですよね(笑)。ファッションとサブカルチャーを融合させる人が結構出てきたことで、以前やっていたサブカル系のファッションも、今後はやらないかもしれません。僕にできることはもうないかなという心境です。

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谷田:初期の「ミキオサカベ」は普通のTシャツを作っていたり、結構リアルだったじゃないですか。その後パリで見たときはパンクっぽい結構難しいものを作っていて、その時点から既にブレていないといえばブレていないし、ブレているといえばブレている。同じものを作り続けるブランドが多い中、「ミキオサカベ」のようなブランドは珍しいと思いますね。

坂部:一貫してブレているというブレがないブランドなのかもしれないですね(笑)。

谷田:そう思います。「ベッドサイドドラマ」もテーマによってブレがあって、そこは結構似ているのかもしれない。その点「ジェニーファックス(Jennyfax)」はブレていないブランドだと思います。

坂部:売れたらブレなくなりますよね。売れたらビジネスが広がって、社員が増えたり責任が増えるとその方向性を保たなければいけなくなりますから。ある程度同じリズムでやっていかないといけなくなってしまう。

谷田:大人になっていくというか。そういうときはなんとなく寂しい気持ちで見つめていたりします(笑)。

−それぞれの服づくりのアプローチは?

坂部:アイテムを見る限り、谷田さんと僕とでは服に対する考え方と作り方が根本から違う気がしますね。

谷田:僕はまず先にテーマを考えます。一度視野をぎゅっと絞り込んで、狭めたところから、どうギリギリまで広げていけるかということを大事にしている作り方です。

坂部:道筋を作るためにテーマがあるという感じですか?

谷田:そうですね。まあ自分が退屈しないためでもあるんですけど。テーマがあったほうが、ゲーム性が出るというか。素材を作るにもテーマがあったほうがいいですね。テーマから素材とデザインを同時に仕上げていくという流れです。また「ベッドサイドドラマ」はオリジナルの生地制作にも力を入れていて、産地もかなり回っています。恐らくですが、この規模感のブランドのデザイナーで一番素材をみているかもしれません。

坂部:デザインの中で素材の重要度が高い?

谷田:平均値が分からないのでなんとも言えないのですが、比較的高いほうかもしれないですね。

坂部:周りのブランドだと「アシードンクラウド(ASEEDONCLOUD)」は素材に力を入れていると思っています。ちなみに「ミキオサカベ」は低いです。

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坂部:素材選びは、"着心地"と"見た目"どちらに重きを置いているんですか?

谷田:主に見た目ですね。

坂部:見せるための素材なんですね。それは「アシードンクラウド」とは違いますね。

谷田:僕は最初から10年着られる服作りは目指していないんです。結果的に大事にされて10年着られる服になれば嬉しいですが。

坂部:そこは僕も同じです。日本の素材を使うことが多いですか?

谷田:ほとんど日本です。2016-17年秋冬コレクションでは、ベルギー産の生地を使ったりもしていますが、懇意にしている生地メーカーや、国内の生地展などを回って、とにかく色々見て選ぶようにしています。坂部さんはどういったところからデザインしていくんですか?

坂部:テーマもデザインも素材も決めず、抽象的な状態を長く保って考えていくというスタイルですかね。だからテーマから服作りへといったような決まった順序はありません。洋服について深掘りしていくというよりは、アートやカルチャーなど他で興味を持ったものについて考えを巡らせ、広げていくというイメージです。そのためシーズン毎にやりたいことが変わってしまうんです(笑)。デザイン画も書くときと書かない時があったりとまちまちです。

谷田:僕も同じように一旦置く時間は大事にしていますね。2017−18年秋冬のテーマも既に決めているんですが、このテーマをじっくり転がしていく作業をこれからしていきます。

坂部:ファッションだけでなく、何事も時間を置くことは大事だと思いますね。全部言葉で定義していくと、本当にやりたかったことと徐々にズレていくということがあるんです。「いまドキドキしてるのなんだろう」という状態に常にしておかなければならないというか。感情を表現する場合でも、「これは怒りだ」「これは恥ずかしいんだな」とか決めることに恐怖に感じていて、「もしかしたらこうかも」という曖昧な状態のままでいることがデザインソースになることが多いですね。

−言葉で説明できない領域を表現するということでしょうか?

坂部:そうですね。テーマを決めるとルールができて、そのルールとの戦いになっていきますが、そのルールを作らないでいる状態っていうのが僕にとっては大事です。

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