【連載:ファションショーの作り方 vol.4】スタイリストの仕事

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 ファッションショーの明暗を左右すると言っても過言ではないスタイリング。ウィメンズと比べアイテムのバリエーションが少ないメンズでは尚更です。連載「ファションショーの作り方」4回目は、スタイリング組みの現場に潜入。ショーにおけるスタイリストの役割を見ていきます。

【短期連載 vol.1】ファッションショーの基本
【短期連載 vol.2】"東コレ"デビューするダブレットとは?
【短期連載 vol.3】ショーイメージを固める
【短期連載 vol.4】スタイリストの仕事
【短期連載 vol.5】ショー音楽
【短期連載 vol.6】モデルに聞く10の質問
【短期連載 vol.7】ショー演出
【短期連載 vol.8】広報の仕事
【短期連載 vol.9】ヘアメイクの仕事

ポーランド出身の気鋭スタイリスト デミ・デムとは?

 「ダブレット(doublet) 」のスタイリングを手掛けるのは「タンクマガジン(Tank magazine)」や「デュウマガジン(DEW Magazine)」などで活躍するポーランド出身のデミ・デム(DEMI DEMU)氏です。印刷所を経営する父の影響でグラフィックに興味を持ちデザインの世界に入り、ディレクターやスタイリストとして活躍。映画「The Karate Kid Ⅱ」で日本人の道徳心、性格に惹かれ、日本人フォトグラファーとの結婚を機に日本で仕事をしています。

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Demi Demu
ポーランド生まれ。グラフィックアート部門の美術高校を卒業した後、トルンのMikołaj Kopernik Universityでドローイングメディアを専攻。大学卒業後はワルシャワに移り、そこでクライアントとの仕事とは離れて「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」のショップで働く傍ら、スタイリストとしての活動もスタート。2013年から日本で活動している。

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スタイリング組みの流れ

 モデルを決めてからスタイリングをするのが一般的ですが、「ダブレット(doublet) 」はモデルオーディションと同時にスタイリングを決めていきます。予めデミ氏が3日間かけて制作したという候補モデルやアイテムの写真をコラージュしたポートフォリオを元に、オーディションに来たモデルのスタイリングを組んでいきます。

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 1ルックを決めるだけでも、長いときで1時間以上かかることも。ソックスをどこまで伸ばすのか、襟の開きをどうするのかなど実際にモデルに服を着させて歩いてもらい、デザイナーの井野将之氏、ヘアメイクのNORI氏と相談しながら細部を詰めていきます。井野氏は英語があまり得意ではないですが、お互いのことをよく理解していることもありスタイリングはスムーズに進みます。「彼は『YES』だけではなく、さらに『もっとできるだろう』と言ってくれるので、クリエーションに対するモチベーションに繋がっています」と、お互いが高め合える関係性が構築されているとのこと。

スタイリングで追求する独創性

 デミ氏がスタイリストとして最も大事にしていることはトレンドではなくオリジナリティ。「トレンドは、売るために必要なものだと思います。もちろん私もトレンドを把握しなければならないですが、私の創作においてはトレンドは避けなければならないものです」と語り、動物のフォルムや動きからインスピレーションを得ることが多いのだとか。パンツを二枚履きにしたり、ピチピチのTシャツを着させたりと自由な発想でスタイリングを組んでいきます。

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 また"モデルのパーソナリティ"も大切にしており、「私は常にパーソナリティについてのブレインストーミングからはじめます。今回はパーソナリティが表れるモデルの私物を使い、私物にコレクションを合わせるためサンプルを切ったり破壊したりしました」と、井野氏にお願いしてサンプルにはさみを入れることも。今回の現場でもモデルのニーハイブーツに合わせるために、躊躇なく「ダブレット」のロング丈パンツをカットしてショートパンツに変えていました。加えてモデル一人一人のキャラクターを活かすため、普段はどういった服を着るのかを丁寧にヒアリングしていきます。モデルからの「もっと腰履きで履きたい」というリクエストに応えることもありました。

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 ショーはウォーキングがあるため、動きを考慮してルックとは違う視点でスタイリングを組むことが必要。デミ氏もフィッティング時には、人と服の動き両方をチェックしていました。モデルブッキングでは特にモデルの歩き方に着目したようで、「背が高いとか痩せているなど外見ではなく、ショーをダイナミックにするため恥ずかしがったりガニ股だったり異なる歩き方をする人たちを一緒に選びました」とウォーキングに慣れていないプロ以外のモデルを加える理由についても話してくれました。

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 そして最後に、スタイリストが忘れてはならない仕事の一つがモデルのケア。「スタイリストは精神分析家になることが必要だと考えていて、モデルがくつろげる、安心できるように環境を整えることも仕事の一つ」と語るように、モデルとコミュニケーションをとったり、ドリンクやフードを振る舞ったりと現場の雰囲気作りも大切とのことです。

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 結局モデルブッキング・スタイリング組みには2日を費やし、26人のモデルが決定。1日10時間以上の大変体力のいる仕事でしたが、デミ氏は「異なる文化で、言語の壁があるにも関わらず、話し合える素晴らしい人達と出会ったことはとても幸運なことです。チームで一つのものを作り上げることに喜びを感じています」と振り返ってくれました。

次回は「世界観を伝える上で重要なファクターの一つ」ショー音楽について